例えば、家電や家具を購入する際の、「引っ越し先の狭い部屋で使う必要があるので…」とか、「結婚して家族が増えたので…」や、洋服を購入する際の、「取引相手との会合なので…」とか、「来週デートなので…」のような状況やTPO(外発的動機)は、消費行動を理解する上では重要な変数ではありますが、 状況やTPO“そのもの”はマーケティング担当者にとっては制御できない変数です。
また、状況やTPOは(家電を買い替えよう、新しい洋服を準備しよう…はあっても)“特定の”商品やサービスに対する必然性を生むことはありません(もちろん、その状況ならこれしかない、という商品やサービスがあるのであれば、全くないとはいえませんが)。
もちろん、マーケティング担当者にとっては、状況やTPOを知りたいと思うのは当然のことですが(逆にこれらを想定しないマーケティングはありえないともいえます)、さらに重要なポイントは、「引っ越し先ではこんな生活をしたいな…」や、「来週のデートでは彼女にこんなイメージで見てもらいたいな…」のような価値観や感情(内発的動機)を知ろうとすることではないでしょうか。
状況やTPOがマーケティング担当者にとって制御できない変数であるのと同様に、人の価値観や感情も簡単には制御できませんが、自社の商品やサービスに共感してくれる可能性の高い人の持つ価値観や感情の特性を知り、そこにフィットする商品やサービスの価値をデザインやメッセージに変え、それをクリエイティブに込めて伝えていくことで、その人の状況やTPOの変化によって生まれた何らかのタイミングで(家電や洋服のカテゴリにおける)選択肢に入れておいてもらうことができるのでしょう。
“ちょうど今…”(状況)で生まれたタイミングで、“ちょっといい感じだったよね”(共感)と選択肢に入っていれば、“これ使ってみようかな”(意欲)に結びつく…のような感じでしょうか。