対象者のクラスタを予測(判別)するために使用する設問を「判別設問」と呼びます。
判別設問は、対象者の所属するクラスタを予測することもできますが、クラスタを構成する特定の因子に対する傾向性(ネガティブな傾向⇔ポジティブな傾向)を予測することもできますし、判別設問への回答結果を説明変数として活用すれば、因子得点そのものを予測することも可能です。
ところで、消費行動傾向モデルの因子は下記のように9つ抽出されていますが…
この設問群は9つの因子の中のどの因子に対する傾向性(ネガティブな傾向⇔ポジティブな傾向)を予測するための設問群だと思いますか?
設問の内容からは意外に思われるかもしれませんが、答えは「消費意欲や欲求の強さ」に対する傾向性を予測するための設問なんです。
この3つの設問群を使うことで、[消費意欲因子]に対する傾向性(ネガティブな傾向⇔ポジティブな傾向)を69.1%の精度で予測することが可能です。
もちろん、「消費意欲や欲求の強さ」を予測するのであれば、例えば…
“欲しいものがあればついつい買ってしまうほうだ”
“欲しいものがあってもお金が貯まるまで我慢するほうだ”
…のような、予測したい因子と整合性が高い設問を使う方が精度は高まりますが、ちょっと直接的すぎますよね。
多くの設問で様々なことを聴くのであればあまり気にならなくても、特定のことを少ない設問で聴くような場合は、あまりにも直接的な聴き方は避けたい、と感じる場合もあるでしょう。
この設問群は、各因子を抽出する段階で得られた、各因子に対して整合性の高い設問はあえて全て外して、残りの設問の中からできるだけ特定の因子(この場合は[消費意欲因子])の予測に使えそうな設問を3つ抽出したもの、ということになります。
但し、整合性の高い設問は使っていないので、予測精度が少し下がるのは仕方ありません。
さて、今度は、下記設問群はどの因子に対する傾向性を予測するための設問群だと思いますか?
答えは「実用性や機能性を重視する傾向の強さ」を予測するための設問です。
この3つの設問群を使うことで、[実用性重視因子]に対する傾向性(ネガティブな傾向⇔ポジティブな傾向)を72.8%の精度で予測することが可能で、その回答結果を説明変数として活用すれば、[実用性重視因子]に対する因子得点をある程度予測することも可能です(R2=0.406)。
対象者のクラスタ、因子に対する傾向性や因子得点を予測するために最適な設問群はもちろんありますが、回答するのは人です。また、設問は必ずしもアンケートのような形式だけではなく、接客時や会話の中で使いたい時もあるでしょう。
設問を使う状況や場面をイメージしながら、組み合わせる設問を変えることによる予測精度の変化も加味しつつ、状況や場面に則した設問群を検討してみることも大切です。