購買履歴データを活用したRFM分析はマーケティングで最も良く使われる手法ですが、結果的に、同じ対象者にばかりアプローチすることになってしまっていると感じたことはないでしょうか。
もちろん、R(Recency:最新購買時期)・F(Frequency:購買頻度)・M(Monetary:購買金額)スコアの高い既存の顧客を対象にしたシンプルなターゲティングは短期的には効果的ですが、短期的な効果を求めるあまり、継続的な成長を支える顧客育成のための施策が不足してしまえば長期的には致命的です。
購買履歴は離散的な“点”の情報です。
ユーザーモデルの考え方によって、その購買の動機や購買に影響を与えている意識を理解することで、点と点をつなぎ、文脈(コンテキスト)を前提とした新しい顧客理解の仕組みを作ることが可能になります。
その際、特定の事業や対象を想定した個別のユーザーモデルを活用することも可能ですが、顧客の中に常に潜在的にあり、横断的に様々な意思決定に影響を与えていると思われる体験価値概念を対象にしたユーザーモデルを活用することで、より文脈(コンテキスト)のフォーカスを広げることも可能になるでしょう。
特定の事業や対象に対する解像度は下がりますが、顧客の意思決定に通底する体験価値概念を知ることは、例えば、多様な商品を扱う百貨店やショッピングセンターのような小売業や、様々な事業領域の決済を仲介するクレジットカードやポイントカードのような金融業において、特定の事業領域と他の事業領域の間の送客やミックスソリューションの提案に活用できる可能性があります。
潜在的な体験価値概念のフレームワークとしては、例えば、Holbrook(2002)のConsumer Value等が参考になるでしょう。